黄金比を正しく知る

黄金比の顔とは?1:1.618の意味と、研究でわかっていること

1.618はどこから来て、研究は何を示しているのか。顔の比率の測り方と読み方まで。

黄金比と白銀比とは

黄金比は、およそ1:1.618の比率です。線を2つに分けるとき、全体と長い部分の比が、長い部分と短い部分の比と等しくなる分け方で、正五角形の対角線と辺の比にも現れます。1.618…は(1+√5)÷2で、終わりのない小数です。

白銀比は、日本ではふつう1:1.414(1:√2)を指し、「大和比」とも呼ばれます。A4やB5の用紙の縦横比で、半分に折っても同じ比率が保たれるのが特徴です。ただし英語で silver ratio というと1:2.414(1:1+√2)を指すのが一般的で、同じ「白銀比」でも数字がちがうことがあります。

顔の話では「黄金比の顔は美人」「白銀比の顔はかわいい」と紹介されがちですが、顔には測れる距離がいくつもあります。どの2つの距離を比べたのかが書かれていない「黄金比の顔」は、何を表しているのかがはっきりしません。

正面を向く · 頭はまっすぐカメラは目の高さ均一な光
撮り方の図。結果を比べるときは、カメラの位置、光、表情をそろえてください。

「理想の顔」説はどこから来たのか

顔を縦に3等分、横に5等分する目安は、ルネサンス期の芸術家たちが使った比率の規則(カノン)として知られ、今もメイクや美容の説明でよく使われます。こちらは1:1:1のような等分で、黄金比ではありません。黄金比を人体や美しさの法則と結びつける考え方は、1854年にドイツのツァイジング(Adolf Zeising)が人体の比率についての本で唱えてから広まりました。

「古代ギリシャの神殿にも黄金比が使われている」という話もよく見かけます。けれども1992年の数学者の論文は、こうした例の多くが、測る点の選び方しだいで黄金比に見えているだけだと指摘しています(Markowsky, 1992)。

また、マーカート(Stephen Marquardt)が黄金比から作った「ファイ・マスク」を顔に重ねて理想に近いかを見る方法が、美容外科医を含む多くの人に受け入れられてきました。しかしこのマスクは、ファッションモデルに見られるような男性的な特徴の強い白人女性の顔の比率に近く、ヨーロッパ系以外、とくに東アジア系やアフリカ系の顔には合いにくいと批判されています(Holland, 2008)。

研究でわかっていること

顔の魅力の研究でくり返し確かめられてきたのは、ひとつの比率ではなく、平均性と左右対称です。たくさんの顔を重ねて平均した合成顔は、もとの顔の多くより魅力的と評価されました(Langlois & Roggman, 1990)。日本人の顔を日本人が評価した実験でも、平均的な形に近づけた顔や、左右対称に整えた顔のほうが魅力的と評価されています(Rhodes ほか, 2001)。

ただし、平均がいちばんというわけではありません。魅力的と評価された顔だけを平均した顔は、全体の平均顔より好まれ、その差を強めるとさらに好まれました。日本人と白人の評価者で、好みの方向は同じでした(Perrett ほか, 1994)。

黄金比を直接確かめた研究もあります。白人女性の顔写真で、目と口の距離や両目の間隔を少しずつ変えて見比べてもらうと、もっとも魅力的とされたのは、目と口の縦の距離が顔の長さ(生え際からあご先)の約36%、瞳の間隔が顔の幅(左右の耳の内側のあいだ)の約46%のときでした。これは1.618ではなく、平均的な顔の比率と一致する値です(Pallett ほか, 2010)。

古典的な比率の規則を北米の白人の若い成人153人で確かめた研究では、もっともよく当てはまった「目と目の間=鼻の幅」でも当てはまる人は約4割で、規則は平均的な顔を表していませんでした(Farkas ほか, 1985)。ひとつの比率が美しさを決めるわけではなく、表情や肌、髪、その人らしさなど、比率の外にあるものも大きく影響します。

よく語られる比率と、実際の顔の値

下の表は、黄金比や古典的な規則で紹介される比率と、FaceRaterの参考データ(公開研究用に集められた成人の正面写真2,560枚)を特徴点で測った値を並べたものです。右の列は、真ん中の値と、半数の写真が入る範囲です。

縦の三分割や横の五分割のように、真ん中の値が目安に近い比率もあれば、口と鼻の幅のように黄金比から大きく離れた比率もあります。半数が入る範囲を見ると、ふつうの顔の比率にもかなりの幅があることがわかります。どれもFaceRaterの特徴点の位置で測った値で、たとえば目と目の間の比は、目頭の点をどこに置くかで大きく変わります。

よく紹介される比率と、参考写真2,560枚の実測値
比率よく紹介される目安参考写真の真ん中の値(半数が入る範囲)
口の幅 ÷ 鼻の幅1.618(黄金比)1.24(1.18〜1.30)
鼻の幅 ÷ 目と目の間1(同じ幅)1.18(1.13〜1.24)
目と目の間 ÷ 目の幅1(目ひとつ分)1.30(1.23〜1.38)
目の幅 ÷ 目の高さでの顔の幅0.2(横の五分割)0.193(0.185〜0.201)
眉のライン〜鼻下 ÷ 鼻下〜あご先1(縦の三分割)0.99(0.93〜1.05)
鼻下〜口 ÷ 口〜あご先0.5(1:2)0.49(0.44〜0.54)

自分の顔の比率を測るには

FaceRaterの黄金比診断では、478の特徴点から顔の縦と横、目の間隔、鼻・口・あごの幅を測り、どの点をどこで割ったかがわかる形で表示します。顔の縦はメッシュの額の点からあご先までで、生え際ではないため、生え際から測る説明より値が小さく出ます。ページの計算ツールでは、自分で測った2つの長さを入れて、1.618との差を確かめられます。

自分で測るときは、どの点からどの点までを測るかを先に決めることが大切です。写真で測るなら、次の手順で進めると、別の写真とも比べやすくなります。

  • 正面を向き、カメラを目の高さに構えて、顔から少し離れて撮る(近くからの広角は顔の中心が大きく写る)
  • 目頭・目尻・小鼻・口角・あご先など、測る点を写真の上で決める
  • 2つの距離を同じ単位(ピクセルで十分)で測り、長いほうを短いほうで割る
  • 生え際を使う比率は、前髪を上げて生え際が見える写真で測る
  • 同じ条件で2〜3枚撮り、値がどれくらい動くかを確かめる

FaceRaterが1.618を使わない理由

FaceRaterのバランススコアと顔面偏差値は、1.618も1.414も使っていません。17の比率を、男女と7つの人種グループに偏りなくそろえた参考写真2,560枚と比べ、多くの比率は、その比率がよく見られるグループの典型的な値に近いほど高く評価します(目の開き具合は開いているほど、左右差は小さいほど高くなります)。ひとつの理想の数字を決めると、その数字のもとになった限られた顔立ちだけが有利になってしまうからです。日本語版では、その結果を東アジア系の参考写真358枚の中での順位で表しています。

ただし、一般的な範囲に近いことと、魅力的であることは同じではありません。人がつけた魅力の評価とバランススコアの関係を研究用の顔写真データ(London Face Set)で確かめたところ、順位相関は0.29で、弱い関係でした。比率は顔を説明する情報で、目標にする数字ではありません。

計測方法と参考資料

計測の定義と、もとになった資料は下で確認できます。ツールの計算方法と、そのスコアの意味は、分けて考える必要があります。

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写真1枚で顔の縦横比や目・鼻・口・あごの幅を測り、どこを測ったかを写真の上で確かめられます。

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